さて今回は、作家のセンスをビシビシ感じる、秀作短編&4コマ漫画をご紹介。
お手頃なボリュームの作品ばかりなので、スキマ時間にもぴったりですよ!
江戸川乱歩怪奇漫画館
書誌情報
- タイトル:江戸川乱歩怪奇漫画館
- 原作・作画:江戸川乱歩・古賀新一
- 初版発行:2015年
江戸川乱歩怪奇漫画館のあらすじ
日本を代表する推理作家・江戸川乱歩の没後50周年を記念して作られたコミカライズ作品。
コミカライズを手掛けたのは、怪奇漫画の草分け的存在と呼ばれる古賀新一氏。本作では、古賀氏が過去に描いたコミカライズ作品の中から、厳選したものだけをまとめている。
収録作品は――夜な夜なアパートの屋根裏に潜り込むミュージシャン・サブの異常愛を描いた「屋根裏の散歩者」。大金持ちでイケメンの男性と結婚した新婦が、夜中にひそひそと土蔵へ向かう夫をつけ秘密を知ってしまう「人でなしの恋」。推理作家の寒川五郎が商社重役の妻・小山田静子と知り合い、恋に落ちる「陰獣-影なき男の影-」――の3篇。
他にも「旧江戸川乱歩邸」といった資料や、コラム記事も収められています。
江戸川乱歩怪奇漫画館のおすすめポイント
江戸川乱歩氏の奇妙な世界観と古賀新一氏のおどろおどろしい絵柄非常にマッチしており、コミカライズ作品としてクオリティが高いものに仕上がっています。
短編集なので読みやすいですし、収録されているのは怪奇ものばかりです。 しかもただ単に原作をコミカライズしただけではありません。独自のアレンジも加えられています。古賀氏だからこそできるアレンジというか、怪奇漫画を得意とする著者ならではのコミカライズ作品になっています。
もちろん見どころは漫画だけではありません。巻末には乱歩に関する資料やコラムも収録されているので、すでに江戸川乱歩を読んだことがあるという方にも充分おすすめできる内容になっています。
からっぽの世界
書誌情報
- タイトル:からっぽの世界
- 著者:山田花子
- 初版発行:1998年
からっぽの世界のあらすじ
社会的な「ヒエラルキー」や「いじめ」など、人間の醜悪な部分をこれでもかというほど執拗に描いた短編集。人の持つ負の感情や、他者への傲りなどをテーマに、強者と弱者の関係が鮮明に描かれている。
社会になじめない主人公が、歪んだ世界の中で生きていく。誰にも理解されず。孤独の中で一人さ迷う。この物語に救いはない。明るさもない。あるのは暗く淀んだ感情だけ。
描いたのは、24歳にして投身自殺を図った伝説の漫画家、山田花子。世界となじめず、抗いながら生き、ついには統合失調症を発症した彼女が残した心に刺さる至極の短編の数々。
自らの経験をもとに描かれた漫画が見せるものは何か。デビュー作「忘れもの」を含めた戦慄の短編、彼女のすべてがこの漫画には詰まっている。
からっぽの世界のおすすめポイント
本作はリアリティのある短編集になっています。人間の暗くて醜い感情がリアルに描かれており、読む者をはっとさせる力があります。様々なタイプの辛さや苦しみ、悲しさなどが描かれており、その根底に流れるものはまったく理解できないわけではありません。共感を呼ぶ苦しみもあるのです。
だからこそ本作は人の心を強く掴む魅力に溢れており、ある種の中毒性があります。主人公の気持ちが痛いほど分かる、それは過去の自分の傷やトラウマを、無意識のうちに彼らに重ね合わせているからなのでしょう。
ここで描かれるストーリーに救いはないかもしれませんが、「こんな体験をしたのは自分だけではないんだ」と思えるのは、私たちにとってある意味では救いです。
自分がおかしいのか、はたまた周囲がおかしいのか、それは誰にも分かりません。ただそういった苦しみは誰もが持っているもので、その共感性こそが本作の最大の魅力なのです。
たわけMONO
書誌情報
- タイトル:たわけMONO
- 著者:ほりのぶゆき
- 初版発行:1993年
たわけMONOのあらすじ
衣料品、靴、電化製品、アクセサリー…。世の中には無数のものに溢れている。しかし、ごくごくありふれたものたちも、ちょっと「条件」が変わるだけで、まったく普通ではないものになってくる。
例えば、セミやヘビがもしも電話だったら?洗濯機と嫁が合体してしまったら?――などなど、ほりのぶゆきの奇想天外な発想が炸裂する、インパクト抜群のギャグ4コマ。
たわけMONOのおすすめポイント
色々な物品を使ってボケてみせるというのは、いわゆる「モノボケ」として、お笑いの世界では定番です。しかし、本作はその一歩先を行き、様々なものをテーマにギャグをやるだけではなく、その製品自体を巧みに変異させ、不意打ちの笑いを生み出すことに成功しています。
洗濯機の中に「鬼嫁」がいたり、電話がヘビに変わっていたり、ビデオデッキの中に毒蛇が入っていたりと、まさにやりたい放題で畳み掛けてくる積極性の高い笑いを満喫できること必至。
魔法の森で何を見た?
書誌情報
- タイトル:魔法の森で何を見た?
- 著者:兎茶ましろ
- 初版発行:1988年
魔法の森で何を見た?のあらすじ
森に住むキツネの子どもたちは、ある年の夏、学校の先生からテストを受けるように言い渡されます。そのテストの内容は、先生が掘った深い落とし穴のなかから、術を使って脱出するというもの。
しかし、テスト当日、先生が掘った穴には人間の女の子が落ちてしまって…?(~表題作「魔法の森で何を見た?」~)
表題作の「魔法の森で何を見た?」の他、「しあわせ色の雨上がりに…」や「萌黄色の追憶」、「そらとぶペンギンたち」など、メルヘンな世界で起こる出来事を描いた短編9本を収録。
魔法の森で何を見た?のおすすめポイント
メルヘン色の強いファンタジー作品を収録した短編集です。
80年代の少女漫画らしいほんわかした絵柄で、温かくて優しい、のんびりした雰囲気で物語は進んでいきます。どの短編も味わいのある一編になっており、短いのに心に残る話が好きな人にオススメです。
動物が主体となっている話や、ラブコメのような話など、多様なお話が収録されているので、お気に入りの話を探して読むのも楽しいかもしれませんね。